1月21日 : アイオワから(その2)
       アイオワ・コーカス(民主党員地域大会)に参加して
(きくちゆみ)

メディアがデニスを存在してないかのように扱っているのは、アイオワの前も後も変わりません。でも、今後彼の政策がより重要性を増し、注目を浴びることは間違いありません。ブッシュ大統領に本当の意味で対抗できるのは、彼だけですから。昨日の一般教書演説では、共和党と民主党の反応が対照的でしたね。

それでは! 
クシニッチは「選挙戦ははじまったばかり、ここからは登っていくだけ」と言って、次の最初の予備選挙が行われます。

( 「コーカス」をどう訳すかいろいろ悩んだのですが、今回のアイオワ・コーカ スは民主党員地域大会、というのが一番近いのですが、日本語訳としては定着していないので、コーカスとカタカナ表記で書きます。)

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昨晩、7時から民主党員集会がアイオワ州全域で行われ、その中の一つの地区Clive 3・クライブ3地区)にオブザーバーとして参加し、プロセスを一部始終体験してきました。

6時ごろから各会場には人が集まりはじめます。それぞれの陣営は自分たちのポスターを貼ったり、クッキーを焼いてきて(ケリー陣営)まだ投票を迷っている人を誘い込んだり、ビラを配ったり、和気藹々とやっています。

6時半までにそれぞれの地区の会場に民主党員が集まり、全員が登録をすませます。このときにまだ民主党として登録を済ませていない人(共和党員、緑の党、その他)は民主党員としての登録を済ませます。今回は共和党から民主党に乗り換える人が多く、これはかつてはあまり見られなかった現象だそうです。

乗り換えた人の理由は「ブッシュ大統領の極端な政策に反対だから」ということ。クライブ3地区では新規登録票が足りなくなってしまい、別の会場に取りに行くという一幕がありました。でも、この集会が終わったら、またすぐに共和党に戻ることも可能なので、彼らは一晩だけの民主党員かもしれません。

登録票をもとに地区集会の参加人数を決定します。この数がとても重要。というのも各候補者は参加人数の15%の支持がないと、党員集会での立候補が認められないからです。6時半までにクライブ3地区に集まった人数は165名。その後若干増えて、最終票決時には185名になりました。

市民の中から任命された人が集会の仮議長を務め、互選で議長を任命します(拍手で任命)。クライブ3地区ではハワード・ディーン陣営のボランティアが議長になりました。7時になるまで、党員集会の進め方について、あるいは同時に行われる警察署長や補選についての説明があり、いよいよ7時に運命の時間がやってきます。

「7時になりました。部屋の扉を閉じます。それでは各陣営ごとにグループに分かれてください。移動前におよその人数を把握します。まずケリーの支持者は手をあげて」と議長。およそ半数弱が手をあげます。それは胸にはってあるステッカーでも一目瞭然です。

「エドワーズは?」また半数弱。そして、トップランナーと目されるディーンは、少なめで30人ぐらいでしょうか。そしてわれらがクシニッチは、15人ぐらい。うーん、これでは15%に満たないかも??

アイオワ民主党員集会だけはこれから行われる他州の予備選挙とは違い、候補者として認めらるためには、その会場に集まった党員の15%の支持が必要です。クライブ3地区では最初の登録終了時の165人という数字が採用され、その15%は24人であることが議長から告げられます。そしてそれぞれのグループに分かれたあと、24人に満たない陣営は、解散して別の候補者を支持するよう告げられます。

クシニッチ陣営は16人、代理人を党大会に送るのにあと8人足りません。あと8人をどこか他の陣営から引っ張ってこようと、この時点でまだ誰にするか決めていない人たちとの交渉がはじまります。それぞれの陣営が「こっちへこい、なぜなら×××は○○だから」とアピールします。また予想よりも人数が少なかったディーン陣営は、クシニッチ支持者にしきりに「(はやくクシニッチをあきらめて)同じ反戦候補のディーン陣営に合流すべきだ」と誘い込みます。

クシニッチは自分が15%を確保できなかった選挙区はエドワーズを支持するように、とその日の5時のテレビでアナウンスしていたので、何人かのクシニッチ支持者はエドワーズ陣営に合流しました。しかし、あくまでも反戦のスタンスを貫きたいという人はディーンに合流しました。

こうして、市民同士の自由な駆け引きや交渉の末に、この地区のそれぞれの陣営の支持者数は、
エドワーズ 75人
ケリー 68人
ディーン 42人
と決定しました。クシニッチを最初に支持した16人(9%)は、この数字の中に消え、最終結果は0人と記録されます。つまり、15%以下の少数意見は反映されず、ここで消えてしまうのがアイオワのやり方なのです。

さて、ここからはかなりあらっぽい計算です。クライブ3地区から選出される民主党大会代理人は8人。それぞれの得票数を185人で割って、パーセントを出し、それに8をかけて、代理人の数を決めます。
例えばエドワーズは、75÷185×8=3.2
同様にケリーは、68÷185×8=2.9
ディーンは、42÷185×8=1.8
あとはそれぞれ四捨五入してエドワーズとケリーが3人、ディーンが2人の代理人を民主党大会に送ることが決まりました。

この時点でそれぞれの陣営の地区キャプテン同士が集まって、この数字で異論がないかを確認し、そして異論がないと分かった段階で、クライブ3地区の党員集会の結果が全員に告げられます。全員が承認の拍手をして、集会終了です。

夜7時から始まって、ここまでのプロセスに50分ぐらいかかったでしょうか。それから残った市民が部屋のいすを片付けるのを手伝い、私たちが会場を後にしたのは8時過ぎでした。

それからデ・モインのダウンタウンのホテルで行われたクシニッチの支持者が集まるパーティーに行きました。惨敗でさぞやがっかりしているかと思ったら、そこは熱気があふれていて、びっくり。ちょうどクシニッチが会場に入る前で取材を受けており、今回の結果をどう受け止めるかという話をしていました。私は近くにいてその様子を写真に撮りましたが、周りに人が多くて直接話すことはできませんでした。彼は目だけで私に挨拶をしました。

会場にクシニッチが入っていくと、支持者たちは興奮している様子でした。クシニッチが「代理人を得た地区は?」と聞くと、多くの人が手を上げてクシニッチのポスターを高く掲げています。クシニッチ陣営が思ったよりも多くの代理人を獲得したのがわかります。私の会場は保守的な地区でしたが、それでも9%がクシニッチ票でした。ディーンを抜いてクシニッチが3位に滑り込んだ地域もあり、彼の善戦ぶりはすべてのメディアの予想を覆しました。

パーティーでのクシニッチのスピーチはこれまでにもまして、熱気を帯びたものでした。「誰も私たちがここまでやると思っていなかった。最下位(9位)といわれ続け、新聞にもテレビにも取り上げられなかったが、今は第5位につけている。ここからは上に登っていくだけだ。映画『シービスケット』を見た人はみんな、最後に誰が勝つかを知っている。私たちのキャンペーンは今ここから始まったばかり。ありがとうアイオワ。ありがとう、ありがとう!」と満面の笑顔。落胆している様子はまったくなく、予想以上の結果に喜んでいる感じですらありました。

翌日の地元新聞(デ・モイン・レジスター)にクシニッチは「希望していた通り、何人かの代理人を得ることができた。ある人にとってはこれが選挙戦の終わりかもしれませんが、私にとっては始まりに過ぎません。今は第5位です。そしてここから上昇していきます。誰も私たちが5位以上になるとは思っていませんでした。ですから期待を超えたわけでも、期待以下だったわけでもありません」とコメントしていました。

この党員集会はここアイオワだけの伝統で、ここから先は予備選挙(プライマリー)という投票(1人1票の投票)になります。部屋に集まり、候補者ごとにグループ分けをして、挙手で人数を数え、途中で候補者の乗り換えを促す党員集会のやり方は、誰が誰を支持しているかが一目瞭然で、とても面白いプロセスです。とくに、途中でクシニッチ陣営やまだ候補者を決めていない人を誘いにくるその他の陣営の市民同士のやり取り、駆け引きはとても近くで聞いていて興味深かったです。それにしても、この15%ルールがあるかぎり、少数意見は最初に排除されてしまうのがちょっと腑に落ちません。

クシニッチは結果として1.3%という数字になってしまいましたが、この1.3という数字の影には、本当は10%ぐらいの支持者がいた、ということを覚えておいてください。

アイオワ・コーカスの最終結果
第1位 ジョン・ケリー 38%
第2位 ジョン・エドワーズ 32%
第3位 ハワード・ディーン 18%
第4位 ディック・ゲプハート 10.5%
第5位 デニス・クシニッチ 1.3%
第6位 ウェズリー・クラーク 0.1%
第7・8位 ジョー・リーバーマンとアル・シャープトン 0%

「アイオワを制せなかったら辞退する」と公言していたゲプハートはこの段階で立候補を取りやめる可能性が高いです。クシニッチはこれからが本当の選挙戦である、と言っています。私はこの後、代理人選出数が最も多いカリフォルニアに飛び、森住卓さんのイラクの子どもたちの写真の展示をしながら、ピーストーク&コンサートをあちこちでやっていきます。

 

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