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アメリカへの祈り (A Prayer for America)

Southern California Americans for Democratic Action
February 17, 2002 - Los Angeles, CA
 

 (アメリカに捧げる序曲として) 「わが祖国、そは汝のもの。麗しき自由の国、われは汝を称える…すべての山腹から自由の鐘を鳴り響かせよ…わが祖国よ、自由の聖なる光でいつまでも輝けることを…」(1)「嗚呼、自由の地、勇者の故郷に、あの星条旗は今もはためいているだろうか?(2)「アメリカよ、アメリカよ、汝に神の恩寵あれ。そして輝ける海と海との間に、友愛という善の冠を戴かん…」(3)

  今日、この短いスピーチを私たちの国への祈りとして捧げたい。私たちの国への祝福として、民主主義への愛をこめて。私たちの国への愛をこめて。希望をこめて。自由の光は、私たちの中に宿るかぎり消えることはないと信じて。自由に意見を述べるたび、民主主義という自由の鐘が高らかに鳴り響くことを信じて。自由が人の心を揺り動かし、恐怖は人の心を凍らせると認識して。自由な人間は、恐怖と信念を同時に抱いて進めはしないと信じて。

  合衆国の統一は深遠なる真理の具現であること、私たちの国の結合には、すべての人々がいっしょになるという意味が込められていると認識して。あらゆる人間は本質的に同じであること。世界はつながっていること。経済や貿易や通 信や交通という物質的なレベルのみならず、良心や、人間の心や、世界の心や、生きて自由に呼吸をしたいという単純な衝動や切望を通 じて。この祈りを私はアメリカに捧げる。

  私たちの国が忘れないことを祈ろう。私たちの国家で民主主義の掲げる理想を推し進めることは、市民権の希求と両立するものであることを。 だからこそ、私たちはテロ対策法
(4)の根拠を問い正さなければならない。なぜアメリカは、憲法の下にある正義の保証を、脇に押しやらなければならないのか?
 
  どうして正当化できるだろう、合衆国憲法修正第一条と言論・平和的集会の自由を事実上失効させることを
?
  どうして正当化できるだろう、合衆国憲法修正第四条、不合理な捜索や押収の禁止をもっともらしい理由で事実上失効させることを?
  どうして正当化できるだろう、合衆国憲法修正第五条を事実上失効させ、しかるべき手続を無効にして裁判を通 さずに曖昧な理由で拘禁できるようになることを?
  どうして正当化できるだろう、合衆国憲法修正第六条、迅速な公開裁判を受ける権利を事実上失効させることを?
  どうして正当化できるだろう、合衆国憲法修正第八条、残酷で異常な刑罰の禁止を事実上失効させることを?

 通信傍受とインターネット利用の監視が司法の監視なしに広く行なわれることを、私たちは正当化できない。まして司法の監視のもとで行われるなど、もってのほかだ。令状なしに捜査が秘密裏に行われることを、私たちは正当化できない。司法長官が国内のテロ組織を指定する権限をもつことを、私たちは正当化できない。受診歴や財務記録など、あらゆる場所のあらゆるシステムに保存されたあらゆるデータにFBIが完全にアクセス可能になるのを、正当化することはできない。

 私たちは正当化することはできない。この国の人々を諜報活動のターゲットとする権限を、
CIAに与えることを。政府が市民からプライバシーの権利を奪う一方で、自らの運営については機密を是とすることを。先ごろ司法長官は、胸をあらわにした正義の女性像を布で覆い隠した(5)が 、像をわざわざ露出させねばならないような正義存亡の危機は現時点、今政権下では存在しないとあたかもアピールしたかのようだ。

   私たちの国家の指導者たちが、恐怖にのまれないよう祈ろう。今日、われらが国会議事堂には大いなる恐怖が巣食っている。そしてこれについては、現在の状況下で議会の至らない点を追及する前に理解しておく必要がある。大いなる恐怖は、9/11に議事堂からの避難を余儀なくされたときに生まれた。そして、下院のメンバーが非公開の説明会でCIAを問い詰めている最中に爆破の予告が伝えられて、またもや議事堂を退去しなければならなかったときに引き継がれた。
 私たちの政府の研究所で作られたのかもしれない炭疽菌が郵便で届き、ワシントンを離れなければならなかったときに引き継がれた。
  司法長官がテロへの警戒態勢を全国的に宣言し、政府が恐るべきテロ対策法案を議会に提出したときに引き継がれた。
  ビン・ラディンのテープが発表されるのと時を同じくして、大統領が弾道弾迎撃ミサイル制限条約
(6)からの脱退を表明したときに引き継がれた。
  大いなる恐怖は、議事堂周辺に非常線を張るというかたちで今も残っている。議事堂敷地内に入る私たち下院のメンバーを迎える、武装した迷彩 服の州兵として今も存在している。議決のたびに通り抜けなければならない、コンクリートで仕切られた迷路として今も存在している。 非常事態という仕掛が、私たちを恐怖に閉じ込めている。 選ばれざる大統領
(7)と副大統領によるパトリオット・ゲーム(8) 、マインド・ゲーム、戦争ゲームを戦うには出来の悪い仕掛が。

   私たちの国がこの戦争を終わらせるよう祈ろう。

  「共同の防衛の推進」はアメリカを形作る原則の
1つである。われら下院は、9/11の悲劇に対処する権限を大統領に与えた。9/11の恐怖がもたらされる端を担った人物たちに対処を許可した。けれども、私たち国民と選出された議員は、政権による対処法を診断する権利、対処法を調和のとれたものにする権利、対処法に疑問を投げかける権利、対処法を修正する権利を留保しておかなければならない。

なぜなら、私たちはイラク侵攻を認めてはいない。
私たちは、イラン侵攻を認めてはいない。
私たちは、北朝鮮侵攻を認めてはいない。
私たちは、アフガニスタン民間人への爆撃を認めてはいない。
私たちは、キューバのグアンタナモ湾にアルカイダの捕虜を無期限に拘留することを認めてはいない。
私たちは、ジュネーブ条約
(9)からの脱退を認めてはいない。
私たちは、軍事裁判所がしかるべき手続や人身保護令状
(10)をとりやめることを認めてはいない。
私たちは、暗殺チームの存在を認めてはいない。
私たちは、対敵諜報活動
(11)の復活を認めてはいない。
私たちは、権利章典
<sub>(12)</sub>の破棄を認めてはいない。
私たちは、憲法を骨抜きにすることを認めてはいない。
私たちは、国民
IDカードを認めてはいない。
私たちは、権力がカメラで街の隅々まで覗くことを認めてはいない。
私たちは、互いを監視し合うことを認めてはいない。
私たちは、
911日に命を落とした罪なき人々の血が、アフガニスタンの罪なき村人の血で贖われることなど求めていない。
私たちは、政府が好きなときに、好きな場所で、好きなように戦争を行なうことを認めてはいない。
私たちは、終わりなき戦争を認めてはいない。
私たちは、恒久的な戦争経済を認めてはいない。

  にもかからわらず、私たちは永続的な戦争経済に突入しようとしている。大統領は軍事費の
456億ドル増額を要求した。防衛関連のプログラムは全体でほぼ4000億ドルに及ぶ。国防総省は外部監査を決して受け入れようとしないことを考えてみてほしい。下院への監察官の報告によれば、国防総省にはつじつまの合わない取引が1兆ドルもあることを考えてみてほしい。ここ数年、国防総省では、購入品に対する支出額が220億ドルも合わず、数十億ドル相当もの輸送中の在庫が紛失したとして帳簿から消され、およそ300億ドルもの要らない備品を保持している。

  にもかかわらず、終結したはずの冷戦に備え、武器システムに対する防衛予算は増大を続けている。新たな戦争を生み出そうとして新たな敵を求める、武器システムに対して。このことは、テロとの戦いとは一切関係ない。これは、軍事産業を私たちの国の富で活性しようとするもので、私たちの国家の行く末を危険にさらし、思考の軍事化、ひいては予算の軍事化により、民主主義そのものを危険にさらすものである。

  私たちの子供たちのために祈ろう。子供たちには、終わりなき戦争ではなく、終わりなき世界を受け取る権利がある。子供たちには、飢えの恐怖、粗末な医療しか受けられない恐怖、住処を失う恐怖、無知がもたらす恐怖、希望を失う恐怖から解き放たれた世界を受け取る権利がある。自由な人間の存続にふさわしくない世界観、民主的価値観の存続にふさわしくない世界観、私たちの国家の存続にふさわしくない世界観、世界の存続にふさわしくない世界観にとらわれた、警察権力に対する恐怖から解き放たれた世界を受け取る権利がある。

  一国民として、一政府として、私たちが自らを奮い立たせ、
9/11の廃墟から私たちの民主主義の伝統を生き返らせる勇気と意志を持っていると祈ろう。民主主義への私たちの愛を表明しよう。平和への私たちの意志を表明しよう。非暴力を私たち自身の社会をまとめる原理とするよう働きかけよう。平和を見据え、戦争を必然のものとはせず、時間がかかり骨の折れる政治のやり方に戻ろう。いつの日か、戦争が過去の遺物となる世界に向けて力を尽くそう。

  それこそが平和省創設案が描くビジョンだ。現在
43名の下院議員がこの案を共同提案している。核廃絶が至上命題となった世界を目指そう。だからこそ、弾道弾迎撃ミサイル制限条約の遵守を求めることから私たちは始めなければならない。だからこそ、核拡散防止に対し断固とした態度をとらなければならない。

アメリカが先導して大量破壊兵器を禁止できる世界を目指し、力を尽くそう。大地や海や空からだけでなく、宇宙からも大量 破壊兵器をなくそう。それこそが
HR3616のビジョンだ。 脅威から解き放たれた宇宙。天を見上げて神の創造を星々に探し、果 てなき戦争ではなく、果てなき叡智、果てなき平和、果てなき可能性に思いを馳せることができるように。なぜなら、天上にある神の国は、地上にも訪れると私たちは教えられているから。

  私たちには、脳裏に刻み込まれた死のイメージを、別のものへと昇華させる勇気があると祈ろう。幾重にもなった
9/11のイメージは、愛国主義のイメージへと形を変え、軍備動員のイメージにつながり、野球のワールドシリーズやニューイヤー・イブやプロフットボール王座決定戦やオリンピックやストロボの閃光など、私たちの奥底の恐怖を呼び起こす世俗的なイメージへと飛躍する。これらのイメージを、人と人との協力、他人へ手を差し伸べること、自国の困っている人を助けること、世界中の貧しい人の苦境を救うことへと昇華させよう。それでこそ世界から支持を集められるアメリカだ。それでこそ、悪の枢軸を追及するのでなく、希望と信念と平和と自由の枢軸に自らがあるアメリカだ。

  アメリカよ、アメリカよ。汝に神の恩寵あれ。善の冠を戴かん。大量破壊兵器に拠ることなく。悪の枢軸など持ち出すことなく。国際条約を破棄することなく。一極集中の世界で王国を築くでなく。アメリカよ、善の冠を戴かん。

  アメリカ、アメリカ。祖国のために祈ろう。私たちの国を愛そう。国外の脅威からだけでなく、国内の脅威から国を守ろう。アメリカよ、善の冠を戴かん。友愛という善の冠を戴かん。思いやり、自制、寛容という、善の冠を戴かん。平和と、民主主義と、自国と世界中における経済的正義とへの貢献という、善の冠を戴かん。 アメリカよ、善の冠を戴かん。アメリカよ、善の冠を戴かん。善の冠を戴かん。 ご清聴ありがとうございました。

《翻訳:佐藤やよい》

1):一般に親しまれている愛国歌の一節。マーチン・ルーサー・キング牧師も1963828日のワシントン大行進の際のスピーチ、I have a dreamで引用している。
2):米国国歌「星条旗よ永遠なれ」の一節。
3): 第2の国歌といわれる「美しきアメリカ」の一節。
4):テロ対策法=PATRIOT Actと呼ばれ、20011026日発効。テロリスト逮捕を目的として、電話の盗聴やインターネット傍受等の権限を政府に与える法案。
5):ジョン・アシュクロフト司法長官は、司法省のホールにある正義の女神像の胸があらわになっているのが猥褻であるとして、8000ドルの税金を使い青い布で女神像の胸を覆った。その後、サウジアラビアから女性の身を包むブルカがプレゼントされ、青い布はネットオークションで10ドルで売られた。
6):弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約) =(http://www.jnc.go.jp/kaihatu/hukaku/database/yougo/yk0047.html 核燃料サイクル開発機構サイトより。一部修正)  対弾道ミサイルシステムとは、戦略弾道ミサイル(大陸間弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイル)を迎撃するもので、弾道迎撃ミサイルシステムとも呼ばれていて、19725月に署名されたこの条約はその展開を制限するものです。  60年代末に戦略兵器削減交渉(SALT)が始まり、戦略的安定性のために防御を制限すべきとされ首都防衛用かICBM基地防衛用かの1か所のみに配備が制限されました。  90年代に入り、アメリカが戦域ミサイル防衛(TMD)の開発を開始したため、この条約との関連が米ロの争点となりましたが、97年9月に両国はABM条約の規制を受けない条件につき合意に達し、アメリカの現状の計画はABM条約に規制されないこととなった。99年になり、アメリカは国家ミサイル防衛(NMD)の研究を開始しようとしているが、これはABM条約と抵触すると考えられ、アメリカはロシアに対しABM条約の改正交渉を提案していた。
7):選ばれざる大統領=ブッシュ大統領のこと。2000年の大統領選挙で、ブッシュ現大統領がゴア前副大統領に得票数で下回りながらも接戦で勝ったことから。
8):パトリオット・ゲーム= トム・クランシー作の小説。元海兵隊員の主人公がIRAテロリストにたちむかい、その後CIAに入る。映画化もされている。
9):ジュネーブ条約=(毎日新聞サイトよりhttp://www.mainichi.co.jp/news/kotoba/sa/20020131_01.html) すべての武力紛争における傷病者、捕虜、文民の保護について定めた国際条約。世界のほとんどの国が加入している。4条約と二つの追加議定書からなる。このうち「捕虜の待遇に関する条約」は「捕虜は常に人道的に待遇しなければならない」として処遇内容と方法を規定。処刑、拷問、暴行、脅迫、報復行為などは禁止。侮辱や公衆の好奇心から保護されねばならないとして、顔写 真の公開なども禁じている。捕虜の名前、生年月日、軍隊での地位以外の情報を強制的に入手することも禁止している。
10):人身保護令状 =(悪魔の辞典より http://www005.upp.so-net.ne.jp/kareha/trans/dd_h.htmHABEAS CORPUS [人身保護令状]:冤罪によって投獄された人物を出獄させられるかもしれない令状。正式には、違法な拘禁を防ぐために被拘禁者の出廷を命じる令状のこと。 (在日米国大使館より) 合衆国憲法第一条第九節(二)人身保護令状の特権は、反乱または侵略に際し公共の安全上必要とされる場合のほか、これを停止してはならない。
11):対敵諜報活動=COINTELPRO(COunter INTELigence PROgrams)と呼ばれる。FBIが打ち出した,政治的な反体制勢力を破壊する計画で、キング牧師もその標的だった。
12):権利章典=(マルチメディア・インターネット事典より http://www.kaigisho.ne.jp/literacy/midic/data/b/b136.htm)人間がまともに生きるための権利を保障した米国の証書の名称で、これを破ることは、人間性を無視したことになり、例え政府でもそれを犯すことは許されていない。米国の独立宣言とともに、NARA(National Archives and Records Administration/米国国立公文書館/米国国立資料館)に保存され、スミソニアン博物館に展示された元祖「星条旗」とともに、米国国民の誇りであり、最後の砦といえる。

(
OPEN JAPANより転載)

 

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